人工哺育されたホッキョクグマで、国内最長の生存記録を更新している愛媛県砥部町の県立とべ動物園のピース(メス)が2日、20歳に。1日、動物園で誕生会が開かれ、飼育員や大勢の来園者がお祝いした。
ピースは1999年12月2日、2001年に死んだ父親パールと母親バリーバ(28)の間に生まれた。しかし、一緒に生まれたもう一頭のメスが母親に傷つけられ、まもなく死んだ。ピースは人工哺育で育てられることになった。
親代わりとなった担当飼育員の高市敦広さん(49)は試行錯誤を重ねた。それまでホッキョクグマの人工哺育の成功例は世界でも2頭だけ。生後100日余りまでは毎晩、自宅に連れ帰り、胸の上にのせて眠った。アザラシ用のミルクは下痢をするとわかり、犬用ミルクを濃度を調整して、哺乳瓶で与えた。
3歳ごろからてんかんの持病を抱え、プールでおぼれたこともあった。現在は1日2回の投薬で発作を抑え、680グラムで生まれた小さな体は20年間で320キロあまりに。おりの中でのんびり動く姿が来園者の人気を集めている。
誕生会には、家族連れなど約400人がピースの暮らすクマ舎前に詰めかけた。動物園のスタッフや来園者たちが「ハッピーバースデー」を歌い、ピースは好物のリンゴの載った氷の特製ケーキをほお張った。
両親と3人で訪れた松山市の寺山彩ちゃん(5)は、寝る時はいつもピースのぬいぐるみと一緒。この日も「お誕生日おめでとう」と言って、持ってきたぬいぐるみを抱きしめた。
高市さんも“まな娘”の成長を祝福。「じっと見ていると癒やされるし、飼育員として、私も成長させてもらった」と目を細めた。(照井琢見、藤井宏太)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル